新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、世界ではアメリカやイタリアなど少なくとも63の国と地域で緊急事態や、非常事態の宣言が出ている。

海外では、非常事態宣言に関する明確な規定がない国がある一方、国民の権利が著しく侵害されるおそれがあるとして、非常事態の措置が乱用されないよう規定を設ける国があるなど、宣言の内容や位置づけは国や地域によって大きく異なります。

アメリカ

アメリカでは先月13日にトランプ大統領が国家非常事態を宣言した。

合衆国憲法には、緊急事態が起きた際に大統領に一時的に権力を集中させることを認める明文の規定はありませんが、行政権を認める条項などを根拠に、大統領には国家を存立させるために、必要なあらゆる権限が与えられていると考えられている。

一方で、1976年に作られた国家緊急事態法では、議会の統制が大統領による権限の行使に及ぶことなどが定められている。

現在、各州で出ている外出制限などの措置は、大統領の国家非常事態宣言に基づくものではなく、各州の知事や市長の権限で出されている。

このうち感染者が最も多いニューヨーク州では、警察、病院、スーパーの店員などのほか、電気や水道といった都市機能の維持に必要な業種を除く、すべての従業員の出勤が禁止となっていて、違反のあった事業者には、罰金や罰則が科されることになっている。

イタリア

世界で最も多い1万5000人を超える死者が出ているイタリアでは、ことし1月末に緊急事態宣言が出された。

先月10日からは全土で外出制限を始めたほか、あらゆる集会も禁止していて、違反した場合、罰金が科される。

また、食料品店や薬局などを除き、ほとんどの商店の営業を認めない措置をとっている。

スペイン

また、イタリアに次ぐ1万2000人を超える死者が出ているスペインでも、先月13日にサンチェス首相が非常事態を宣言し、翌日から全土で外出が制限されたほか、食料品店などを除く商店やレストランの営業も禁止され、理由なく外出した場合は罰金を科すなどの対策がとられている。

非常事態宣言には、工場や農場など、民間の施設やサービスを国が一時的に利用できると規定されていますが、これまでのところこの規定に基づく措置はとられていません。

ドイツ

一方、ドイツでは、緊急事態宣言はこれまでのところ出ていませんが、憲法にあたる「基本法」に緊急事態条項が設けられている。

この規定では、第2次世界大戦の際に、同種の規定がナチスによって乱用されたことを教訓に、政府が単独で緊急命令を出すことを認めないとしているほか、いかなる非常時にも政府の措置が立法と司法のコントロールのものに置かれる仕組みになっている。

また、市民の権利を守るための「抵抗権」も規定されている。

中国

このほか、世界で最初に新型コロナウイルスの感染拡大が確認された中国では、国家主席が「緊急事態」を宣言できるとする規定が憲法に設けられていますが、今回の新型コロナウイルスへの対応では、この規定に基づく宣言は出されていません。

今回の感染対策では、突発的な公衆衛生上の緊急事態に適用できる規定に基づいて、地方政府が独自に「危険度」を指定し、移動の規制や学校や企業の閉鎖などを指示している。

韓国

半世紀以上にわたって北朝鮮と休戦状態にある韓国では、緊急事態の場合、憲法に基づいて、大統領に「戒厳令」を出す権限が認められている。

このほか、韓国では国民が所有する土地や物資などを非常時に強制的に取り立てることを可能にする法律や、物資や人材を効率的に動員するための計画づくりに関する法律など、いわゆる有事法制が複数、整備されていますが、新型コロナウイルスをめぐっては、これまでのところ、戒厳令などの議論は行われていません。