海外から身に覚えがない“種”が届く、そんな事案が相次いでいます。種が入った袋には、別の商品名が書いてあったりもします。
誰が何の目的で“謎の種”をまいているのでしょうか。
こうした事案に詳しい専門家にも聞いてみました。
(横浜放送局 記者 田中徳絵/ネットワーク報道部 記者 管野彰彦・目見田健)

“謎の種”相次ぐ

「注文した覚えのない植物の種が届いた」
こうした相談が各地の植物防疫所に相次いでいます。
先月には、神奈川県三浦市の男性の自宅に小包が届き、中に、1粒2ミリほどの大きさの茶褐色の丸い植物の種のようなものが数十個入っていました。
三浦市の男性に届いた袋
ラベルの表記から送られたのは中国からとみられています。
ツイッター上には同様の投稿が相次いでいて、種の写真を載せていた東京都在住の30代の女性から話を聞くことができました。

深まる謎

深まる謎
東京都の女性に届いた種
女性に身に覚えのない袋が届いたのは先月28日。
「やけに小さくて薄い袋だな」と思ったそうです。袋には「CHINA POST」などと書かれていたため「なんで中国から?頼んだ覚えもないのに」と驚きと不安を感じました。
手で触っても中身が何かわからず、開封すると小さな種が入っていました。女性は、ネットで同じようなことが起きていないか調べます。すると海外でも同じ事案が起きていることを知りました。
女性
「何かの目的があるの?こんなことをするのは許せないと思いました」
女性はこの後、植物検疫所に種を送りました。
女性
「心当たりはありませんが、通販サイトを利用して過去に商品が中国から届いたことがありました。どこかから情報が漏れているのではないかと私は考えています」
女性に届いた袋のラベルには、「ring(指輪)」の文字も入っていて、さらに謎が深まります。

相談は全国から

相談は全国から
横浜植物防疫所が入る建物
いつごろからこうした事案が増えているのか。
横浜植物防疫所に聞くと、日本では先月29日ごろから全国の植物防疫所に「海外から身に覚えのない種が送られてきた」という相談が相次いでいるそうです。
このため、Twitterやホームページで注意を呼びかけていて、日本では、植物防疫官による検査に合格し「植物検査合格証印」というスタンプが押されたものでないと輸入できないことを伝えています。
植物防疫所の担当者
「今回の種はこの合格証印がないので、届け出ずに持っていることはできないんです。届いた場合は植物防疫所に連絡をしてほしいです。未開封の場合は、受け取りを拒否することもできるので不安な場合は郵便局に相談してください」

一部はネギの仲間?

さらに植物防疫所では、種に病害虫が付着している可能性があるので、庭などに植えたり種が入った袋を開けたりしないよう呼びかけています。
また今回の種は、数種類、確認されていて、一部はネギの仲間に属する種ではないかということです。

飛び交う臆測

飛び交う臆測
いったい、誰が何の目的で種を送りつけてくるのか。
SNS上ではさまざまな臆測が飛び交っています。
「細菌やウイルスに感染させるバイオテロ」「個人情報の取得が目的か」などなど。
なかでも「詐欺ではないか」という投稿が目立ちます。
詐欺や悪質商法に詳しく、詐欺被害に関する消費者庁の委員会のメンバーも務めた多田文明さんに、何をねらって送りつけた可能性があるのか聞きました。

可能性その1「ブラッシング詐欺」

まず指摘したのが「ブラッシング詐欺」です。
実は種が送りつけられる事案はアメリカでも相次いでいて、現地の報道によると、アメリカ農務省は「ブラッシング詐欺」の可能性があると説明しています。

これは、オンラインで商品を販売している業者などが勝手に商品を送りつけたあと、受取人になりすまして、その商品や業者にネット上で高い評価をつける手法です。
アメリカの場合では伝票の中身は宝石などと書かれていて、実際の中身は種だったとしても、宝石を販売したことにして、高い評価を水増しします。

その情報を参考に商品を購入しようとする顧客を増やすねらいです。取材に応じてくれた東京の女性もラベルに「ring(指輪)」と書かれていたことを思うと、ブラッシング詐欺の可能性を感じてしまいます。

可能性その2「国際電話詐欺」

次に指摘したのは、国際電話を悪用した詐欺の可能性です。
伝票には電話番号が書かれています。
商品に心当たりがないので、問い合わせをしようと電話をかけてしまうと、国際電話につながり、短時間の通話でも高額の料金を請求されることがあるのだといいます。

可能性その3「送りつけ商法」

さらに「送りつけ商法」の可能性も指摘します。
これは国内でもよく被害が報告されている手法です。注文していない「マスク」などの商品が送りつけられ、代引きや請求書などを使って代金を要求されます。

ただ、今回の事案では代引きや請求書ではなく、伝票に書かれた番号に電話をすることで、料金を請求される可能性があるのではないかと指摘しています。

可能性その4「個人情報の悪用」

そして、個人情報を入手しようとしている可能性です。
商品を受け取った場合、受け取った人物の住所や名前が間違っていないことが送り主に分かります。

一方、配達できずに商品が戻ってきた場合、該当する人物がすでにそこにはいないことが分かります。
こうして得た情報を元に個人情報が書かれた名簿を更新、最新のものとして売買している可能性もあるといいます。

さらなる被害に注意

多田さんは種を受け取ってしまった場合、まずはクレジットカードの使用履歴を確認して、心当たりのない支出がないか確認をしたほうがいいとアドバイスします。
多田文明さん
多田さん
「受け取っただけでは直接の被害は出ていないかもしれませんが、少なくとも相手が個人情報を持っていることは間違いありません。その情報を悪用して、別の方法でお金をだまし取ろうとしてくる可能性があります。不審な電話やメールなどが来たときは十分に注意することが必要です」

○○の種か…

○○の種か…
各地に送りつけられる謎の種。
世界各地で同じような事案があり、目的や送り主の正体は判然としていません。

ただ、専門家が指摘するように、どこかに潜む悪意を持った人物がまいた“犯罪の種”なのかもしれません。
くれぐれもご注意ください。